サウンド・オブ・ミュージック

子供の頃にビデオで何回となく観たこの映画をとうとう映画館で観ることができた。
アルプスの山並み、青空、そしてなんと言っても、歌!歌!!歌!!!
ミュージカルシーンになるたび胸がいっぱいになって涙が出る。
人間はおそろしく邪悪で愚かで醜い生き物でもあるけれど
一方でこんなに美しいものも生み出すのだなあ、というようなことをあらためて思い、感激した。
お話だけを追っていると、わりあい、物事がスムーズに進み過ぎるように見える。
しかし、だからこそこの映画がいかに優れたミュージカルであるか、
つまり、ストレートプレイならエピソードの積み重ねで表現するところを、
歌一発で表現する、という、ミュージカルの基本中の基本であり、キモでもある点において、
この映画がどれほど高い到達点を示しているかということがよくわかるのだ。
------------------- 以下ネタバレ -------------------
たとえばトラップ大佐が子供たちの歌声につられて『サウンド・オブ・ミュージック』を口ずさむシーン。
これをストレートプレイとして観たら
「子供たちの歌声を聞いただけで、こんなに態度が180度変わってしまうなんておかしい」
と言いたくなるところだが、
あのシーンの、混じり合う歌声が奏でるハーモニーや、見つめ合う目と目は、
妻を亡くしてから、歌や笑いを禁じ、子供たちとの繋がりを失っていた父親が、
それをようやく取り戻したことを、彼らの心が再び繋がりあったことを、
そのときの彼らの心の揺れを、一分の漏れもなく伝えている。すばらしく美しいシーンだ。