インファナル・アフェア

■■■ネタバレ注意!■■■
封切りを観逃がすという失態を悔やみ、絶対に追っかけて観てやると心に決めていた。
が、期待値が高すぎたためか星取は★3.5といったところ。
この映画の物足りない部分はアンディ・ラウ演じるラウのキャラクターの描写不足にあるように思う。
ラウがボスを裏切り、ヤンを殺した兄弟分を射殺し、改めて警察という組織に身を殉じようとする、
その行為を裏打ちする心情がいまひとつ伝わってこないのだ。
確かに権力も名声も徐々に手に入れ、恋人との結婚も決まり、更にその先の道も開けて見えれば、
日の当たる道から逸れて行くことが惜しくなりもするだろう。
しかし、彼は既に警察という権力機構にしっかりと食い込み根を張っているのだから、
裏社会と国家権力の双方を呑み込み牛耳る支配者となる道もあるわけで、
ハードボイルド的な視点から見れば、むしろそうなる方が自然にすら思える。
(実際わたしは、ラウがボスを殺した段階では、そういう展開になるものだとばかり思っていた。)
とは言え、18で組員になってそこそこで警察学校に放りこまれ、その後10年も警察機構に属していれば、
いくらスパイとは言え、頭も心も幾分かは染められるだろう。
しかしラウにそちらの道を選ばせ、観客にそれを必然と感じさせるには、まだエピソードなり描写なりが足りないように思う。
人間が損得を超えた行動を取るのは、信条、もしくは情念に突き動かされたときではないだろうか。
ならば、例えばラウにとってボスが信ずるに値しないものになる瞬間、であるとか、
例えばヤンにとっての、キョンの死、に対応するような警察組織の人間との情の繋がりであるとか、
そういうものが、なにかもうひとつ加えられていたら、この映画はもっとずっと血の通ったものになったのではないかと思う。
あと、キャラクターの描き込みについてはヤンの方に比重が寄りがちになっており、
その点トニー・レオンの方が得をしているのは確かなのだが、
(先にも書いたキョンの死のエピソードとか、別れた恋人との間に娘がいるが彼自身はそのことを知らない、とか、
ウォン警視との絆、またその死のシークエンスとか、感情的な見せ場はほとんどヤンの方に割り振られているといっていい。)
ぶっちゃけアンディ・ラウの顔というのはどうにも「熱血正義顔」なので、徹頭徹尾、一警官にしか見えなかったりもして…
アンディには悪いが、これがレスリーだったら…とかミもフタもないことを思ったりもした。
(トニーとアンディが逆でもよかったんじゃないだろうか…)
まあ他にもケリー・チャンは要らないとか、そもそもトニーもアンディも設定に対して年取り過ぎだとか、
いろいろ細かいことも言い出せば出てくる。
と不満点ばかり挙げ連ねてしまったが、エリック・ツァンアンソニー・ウォンの絡みなど、すばらしいところも多々ある。
それだけに、非常に残念だった。