今日はお休みでとてもいい天気だったので、映画を一本あきらめていつもは利用していない最寄駅の方へ散歩に出かけてみた。と言っても出かけたのは4時過ぎで、自分の夜更かしぐせとインターネット依存と惰眠をちょっと反省する。
外は暖かくて、駅前の商店街は夕餉どきの手前でぶらぶら買い物をしたりのんびりお茶を飲んだりしている人たちでそこそこ賑わっていて、とても和やかな気分になった。駅から少し離れたパン屋の喫茶コーナーでお茶を飲む。「素朴なクッキー」という直径15cmぐらいのクッキーを選んでみたらものすごく固くて食べ終えるのがまるで苦行のようだった。
それから『ラブストーリー』を観るために梅田へ出ると、すっかり日が暮れていた。街中を歩いていても花の香りが風に乗ってどこからか匂ってきて、だんだん春が近づいてきているのを感じる。そのうれしさを満喫する。冬のあいだ寒さにちぢこまっていた体に解放感が充ちて、思わず見上げると、当たり前のことだけれどあたり一面の夜空で、またうれしくなる。ビルとビルの間のどんな小さなすきまも夜空に塗りつぶされていて、「『都市と自然』というのは対立項じゃないな。どんなに大きな都市ももっと大きな自然に覆われている」というようなことを思う。そして周りにそびえ立つたくさんのビルの、窓のひとつひとつに点る灯りに、巨大な自然に囲まれて、コツコツとこんな高い建物を建てて、その中でちまちまとした営みを、生活や、ときには人生とか命とかまで張ったりして繰り広げる人間の愛おしさを感じる。
というようなことを思ったり書いたりしているのは今ちょうどよしもとばななの小説を読んでいるせいだ。わたしはこの人の書く、季節や情景や、もう二度とやってこない今この瞬間、のきらめきが好きだ。毎日沈んでゆく夕日を、毎日同じように眺めても、二度と決して同じ気持ちで眺めることはできない。同じメンツで、同じ場所で集まっても、全く同じ場の空気は決して作り出せない。だから、夕日が泣きそうなほど美しく見えたり、友人たちとバカ騒ぎして死にそうなほど楽しい夜とは、本当に本当に言葉の意味通りかけがえがなくて貴重で唯一無二の瞬間だということ。そういうことを強烈に思い出させてくれるから、とても好きだ。