ラブストーリー

猟奇的な彼女』のクァク・ジェヨン監督の新作。
また「カノン」を使っている。予告編だけかと思ったら本編にも使われていた。この人よっぽどカノンが好きなのだろうか。
最初は地味にしか見えなかったヒロインがだんだんかわいく見えてくるのは『猟奇的な彼女』のときと同じで(前作では男の子の方がそうだったのだけど)これはこの監督の長所なのかもしれない。
ベタすぎるほどにベタ、というのも前作と同じで、でもやっぱりわたしにはこのベタさが心地良い。雨の中、建物の軒先を番小屋に見たてて雨宿りしいしい図書館まで駆けていく二人の足取りなんて、これまたベタなサントラと併せて、恋愛のときめき、心躍る感じがひしひしと伝わってきた。
そう、中盤までは良い調子だった。『猟奇的な彼女』の感動再び!と思った。でも、結局今回はノリ切れなかった。娘のジヘの恋愛が案外すんなりとうまくいってしまったことと、そのタイミングがわりと早かったこと、クライマックスであるベトナム戦争から帰ってきたジュナが失明していたというエピソード、その後のジュナの訃報をジュヒが受け取るエピソードが、いまいちピンとこなかったために、ジヘの恋愛が成就した以降の展開が蛇足に思えてしまった。
そのせいかサンミンが実はジュナの息子だった、つまり報われなかった親同士の恋がその子供たちの間に実ったというロマンチックなオチも、なにやらとってつけたもののように思えて素直に感動できなかった。それに、いくら運命的でロマンチックでも、親と子供はちがう人間同士だから、やっぱりあくまでも本人同士の間で話が展開していた『猟奇的な彼女』の方がわたしは好きだ。
というわけで最後まで観るとまたしても「カノン」の理由がわかるのだが、それじゃあこのままいくとクァク・ジェヨン恋愛映画界のシャマランになっちゃうぞ、と思った。