殺人の追憶

今日の大当たり!これを最後にもってきておいて良かったー!
多くの人が指摘しているとおり、この映画の本当の面白さは、この映画が描いている時代の韓国をリアルタイムで体験した人間にしかわからないものだろう。それでも、現代を生きる日本人であるわたしにも十分に楽しめた、いや、それどころかすこぶる興奮し酔い痴れたのは、実に巧みなストーリーテリングの力ゆえだと思う。
思い返せば嫌らしくさえ感じてしまうほどの小道具使いの巧さ。「猟奇殺人もの」を観に来た観客に敢えて肩透かしを食らわすような、コミカルでゆったりとした序盤の語り口。そして、そこから徐々に狂気を織り交ぜ緊迫感を高めてゆく、その旋律とリズムの見事な転調。(はじめはほとんど気付かないくらい小さく、それから少しずつ、少しずつ、大きく速く響き出す不協和音。深く嵌まり込み、とり憑かれ、軋み、焦り、全ての歯車が狂い出す音。)そして、全てが終わった後に、ふいに耳元で囁かれる不吉な呪文のようなオチの一言まで…………ほとんど、完璧。せりあがるエンドロールと共に、腹の底から湧き出す満足感、満腹感。「ラブ・アクチュアリー」が色とりどりのキャンディーなら、「殺人の追憶」は一汁三菜ごはん付き、バランスのとれたボリュームたっぷりのうまい飯、って感じだ。
あれ?食べる順番逆だな。