書き抜き

キム・キドクは農夫や酪農家に似ている。彼らは人間に食させるため、やがて殺される運命の植物や動物を愛情込め育てる。かと言って、生きるために万物を殺し続ける人間を愛することも決してやめない。地上の哀しみを彼はいつも憎しみながら愛している。
瀬々敬久(『悪い男』パンフレットより)

■以下には韓国映画『オアシス』のネタバレが含まれます。

その偏見、先入観、常識こそが、オアシスの絵にかかる木の枝の影である。ジョンドゥは彼女がその影に怯えたと知った瞬間、ああ、なんと見事にそのことを察知して、ふたたびムショに帰る日、警察や近隣の人たちの大騒ぎのうちに、その枝を切り落として行く。これを、最高の愛の行為と言わずしてなんと言おう。
和久本みさ子(『オアシス』パンフレットより)