江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間

噂の怪作を先日はじめて映画館で観賞しました。
たしかにこの映画は、控えめに言っても常軌を逸していますし、見世物として作られたものであることはまちがいありません。
しかし、観客の皆さんの大爆笑渦巻く館内で、わたしは一人居心地の悪い思いに苛まれていました。その笑い声にゾッとしました。なんだか自分が馬鹿にされているような気分でした。
傲慢を承知で敢えて言わせてもらいたい。おまえら笑いに来ただけちゃうんかと。伝説のトンデモ映画として筋書きもしっかり頭に叩き込んだ上で、最初からその映画で「笑う」ことだけを目的にきたんちゃうんかと。つまりこの映画を「観る」つもりなんか、ハナッからなかったんちゃうんかと。
君らはこの映画の「美しさ」をちゃんと観たんかと。滑稽なまでの行き過ぎたグロテスクさの中に滲み出すような美しさを。君らが笑ってばかりいた土方巽が奇ッ怪な踊りを踊るとき、繰り出される動きの、時としてはっとするような美しさを。
最後の場面ですら胸打たれていたわたしは、大爆笑の波にさらされて、本当にみじめな気持ちで映画館をあとにしました。
どうかこれから「恐怖奇形人間」を観る方は、「トンデモ映画」「究極のカルト」などという世評は忘れて、まっさらな気持ちでご覧になってください。奥田K子、心からのお願いです。